離婚BLOG

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2023.11.02更新

令和5年8月30日、大阪高等裁判所で、児童相談所が8ヶ月に渡って、生後1ヶ月の児童の一時保護を、家庭裁判所の忠告を無視して、継続したことが違法であるとして、大阪府に対して、母親に対する損害賠償を命ずる判決が言い渡されました(原審大阪地方裁判所令和4年3月24日判決)。

児童虐待の恐れがある場合、児童相談所は、まず一時保護を行う処分権限を有し(児童福祉法33条)、2か月以内(33条)に措置処分をしなければなりません(28条)。措置処分が、里親、児童養護施設及び乳児院等に委託する場合には、親権者の同意がない限り家庭裁判所の審判による承認が必要となります。

上掲の事件は、家庭裁判所が、医学的に虐待でない可能性を示唆し、詳しい調査を求めたも関わらず、更なる調査を行わず、担当者の先入観に基づいて一時保護を継続したというものでした。

これに対し、一時保護中に、一時保護委託を受けて児童を監護している者に対して、親権者が引き渡しを求めた事案(家庭裁判所)では、行政処分の効力を家庭裁判所で争うものとして、家庭裁判所の審判権の範囲を超えるものとして却下されています(仙台高等裁判所平成12年6月22日決定、原審山形家庭裁判所平成12年3月10日審判)。

通常の、子の監護者の指定、引き渡しを求めるのは、家庭裁判所の調停、審判手続きに依りますが、相手が、児童相談所が行った一時保護の処分による委託先であった場合には、家庭裁判所の審判手続きにおいては出来ず、行政訴訟として地方裁判所で審議が為される必要があるということです。

なお、通常は、一時保護処分を経過して、児童相談所が措置処分を求める時点で、家庭裁判所の承認手続きにおいて、その当否を検討し争う機会が与えられていると思慮されます。

投稿者: 武末法律事務所

2023.02.08更新

潜在的稼働能力とは、婚姻費用や養育費を算定する場合に双方当事者の収入(と子供の数や年齢)を基に算定する場合に、実際に働いていない場合(収入証明が為されない場合を含む)に、これを収入0とはせずに、働いていれば得られるであろう認定収入を表します。通常、同年齢男女別の平均収入(キャリア等)又は短時間労働者の男女別年齢別平均収入(主婦等パート相当)でもって認定する収入とするものです。

家庭裁判所の調停や審判等においては、短時間労働者の男女別年齢別平均収入(賃金センサス)等を用い、婚姻費用においては、乳幼児等を抱える等働けない事情がある場合にのみ収入0とされることが、比較的多く認められました。別居に伴い、敢えて仕事を辞めて、高額あるいは低額に抑えようとする操作に対抗する行為に対処する方法でした。

これに対し、高等裁判所は、潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的事情によって本来の稼働能力を発揮せず、公平に反すると評価される場合に限るという基準を用いています(令和4年2月4日東京高裁決定、令和3年4月21日東京高裁決定、平成30年4月20日東京高裁決定、平成28年1月19日東京高裁決定、平成20年10月8日大阪高裁決定等)。

安易に、潜在的稼働能力を用いてはいけないということですが、事実上の立証責任は、合理的理由により働けないという側にあり、弊害はないと思われますが、失業や就職経験がない(専業主婦)というような場合に問題になると思慮します。

 

 

投稿者: 武末法律事務所

2022.03.31更新

令和4年3月25日、東京地裁で、親権を持つ父親から二人の子供を連れて別居したのは違法だとして、母親である元妻と助言をした弁護士に、損害賠償を命じる判決が下されました(朝日新聞DIGITAL3.30)。

本件は、家裁ではなく地裁であり、上級審で維持されるかは不明ですが、家裁においても、親権者が決まっている場合には、よほどの事情の立証がない限り、親権者の地位は保護されています。

従って、同事件の元妻側が主張している通り、仮に父親から子供等に対する精神的虐待があった等の場合に、弁護士が検討すべき救済策としては、家庭裁判所に子の親権者変更の申立てをし、裁判所調査官による、子の環境や意思の調査を求めて、対応するのが常套手段です。

仮に緊急を要する場合には、児相に相談するのが適切です。

ここで、注意すべきは、夫婦間において、妻が、子供を連れて別居に至った場合とは事情が異なると言うことです。その場合には、親権は父母共にあり、一方的な親権侵害には該当せず、むしろ従来から主に監護してきた妻が子を連れて行くのは当然のことと評価され、先例もこれを連れ去りとして評価しないと明言しています。ただ、主に監護をしてこなかった父親が、子供を連れて別居する場合には、連れ去りと評価される場合が多く、その場合には、母親が、速やかに、家庭裁判所に子の監護者の指定及び引渡しを求めると、概ね、子の引渡しを命じる処分を受けることが出来ます。

夫婦間で、別居前に、離婚協議が進行している場合などは、混乱を避けるために、別居をする前に、子の監護者の指定を、裁判所に求める方法をとることも一つの方法です。

 

投稿者: 武末法律事務所

2022.01.29更新

オフィシャルホームページは https://takesue-law.com です

投稿者: 武末法律事務所

2022.01.29更新

人身保護請求による子の引渡し請求は、人身保護法を根拠法とする民事訴訟手続で、従来は良く使われていた手法ですが、最近では、家事事件手続法による子の引渡し調停または審判が活用され、人身保護請求は減っているようです。

それは、子の監護に関する判断は、元来、家庭裁判所でなすべき性質のものとして、法整備がなされてきたことによります。

ただ、家事事件においては、以前にも説明しましたが、仮処分は容易には認められませんので、不当な子の拘束という緊急性の高い状況に対し、子の保護を目的とする必要が高いと認められる場合に限り、活用する余地があります。

先例を検討すると、夫婦間と元夫婦間での取り扱いが大きく異なります。夫婦間の場合、双方親権を有していると言う前提で、よほど子の福祉に反すると言う証明をしない限り、子の幸福に反することが明白ではないと言う基準で、引渡し請求は認められません。

単なる環境の比較程度では認められず、仮処分が出ているのに従わない場合、著しく健康が損なわれる場合、義務教育を受けられない場合等の例外事情を証明する必要があります(以上最高裁第3小法廷平成5年(オ)第2108号人身保護法請求事件平成6年2月8日判決・最高裁第3小法廷平成6年(オ)第65号人身保護法請求事件平成6年4月26日判決等)。

これに反し、元夫婦間では、監護権者が定まっていますので、いずれからの引渡し請求も、非監護権者において、相手方の監護が子の福祉の観点から著しく不当という証明をしない限り、認められません(以上最高裁第1小法廷昭和56年(オ)第903号人身保護法請求事件昭和56年11月19日判決・最高裁第3小法廷平成10年(オ)第1850号人身保護法請求事件平成11年5月25日判決等)。

従って、子の引渡し請求は、緊急性が高い事情がありかつその証明が可能な場合には人身保護法に基づく手続きが向いており、そうでない場合には家事事件手続法による手続きが向いていると言うことが言えます。

 

 

投稿者: 武末法律事務所

2022.01.21更新

最高裁判所第1小法廷令和元年(許)第16号財産分与審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件令和2年8月6日決定において、明渡を命じることが出来るとの判断が示されました。

原原審の家裁と同じ結論ですが、原審の東京高等裁判所が、建物の明渡は、財産分与では出来ず、別途訴訟で為すべきであるとしたことに対し、法令違背の違法があるとしました。

根拠法条は、家事事件手続法154条2項4号ですが、原審においては、同法条の適用等の判断自体が示されていません。当職の経験では、たまに、高等裁判所は、家事事件の法令や先例を理解していないと思慮される場面に出くわします。

本件は、財産分与審判に関するものですが、離婚訴訟付帯処分においても人訴法32条2項に同様の規定がありますから、同じ解釈でよいと解されます。

平成23年に、民法を含む人事関係法規の改正が行われました。家事事件は、弁論主義の支配下になく、職権主義の支配下とはいえ、弁護士にも法令の解釈を促す責任があるというところです。

投稿者: 武末法律事務所

2021.11.04更新

婚姻費用や養育費の算定の基礎に、双方の収入があります。給与収入者は源泉徴収票や給与明細書により、自営業者は確定申告書等による所得証明により基礎が定められます。

給与収入者でも、不動産収入等の他の収入が存在する場合には、これを収入(所得)の基礎と出来るかという問題があります。

先例を見ると、特有財産から得た収入(アパート経営等)を、基礎としないとするもの(東京高等裁判所昭和57年7月26日決定)と、基礎とするもの(東京高等裁判所昭和42年5月23日決定・

東京高等裁判所平成28年9月14日決定)とがあります。

前者の理由は、同収入が同居中から共同生活の資とされていなかったからとされ、後者はこれを基礎としない理由はない、とされています。

そうすると、その判断が分かれる理由は、その収入が共同生活の資となっていたか否かということになります。

だとすると、その不動産収入が、共有財産であった場合には、どうなるかという問題があります。

それが、経費を上回って高額の所得を得ていた場合には、当然共同生活の資となっていたと判断されることになると思慮されます。

問題は、その所得が経費を上回る高額の場合、生活の資となっていたと判断されるが、その所得が給与収入を加えても赤字とされていた場合、その所得が基礎とされるべきか否かということです。

すなわち、その不動産が、自宅用ではなく、夫が投資の為に行っていたような場合、その不動産収入を経費が上回っていて給与収入よりも低額の所得とされていた場合、

離婚後の夫の資産形成に寄与する目的ということで、家賃収入やそのための経費は、共同生活の資や使途とはなっていたものとはいえないということで、経費削除前の給与収入を算定の基礎とすべきではないかという疑問が残ります。

先例の、積み重ねを待つことになります。

 

 

投稿者: 武末法律事務所

2021.08.27更新

前回、祖父母に依る子の監護権者指定申立の可否について、最高裁判所は、いかなる事情があろうとも出来ないと判断したことを紹介しました。

最高裁判所は、面会交流についても、同様の判断をしています(令和3年3月29日、最高裁判所第1小法廷)。

いずれも、民法第766条の子の監護に関する処分は父母が協議して決めるとされている法規の内容を根拠としています。

この結論は、父母とは折り合いが悪いが、祖父母とは生活できるという実体の元では、不合理であるという指摘が為され、立法で改正すべきと言われています。

最近、当職が、関与した事件で、父母の間で親権に争いがある中、親権者である母親が子を祖父母と養子縁組をなした事件があります。

発端は、子が児相送りになったことを受けて、父親が子の親権者変更を求めていた事案ですが、調査官報告や児相は父母共に監護権者にふさわしくないと判断していた事案です。

父親が、養子縁組無効を主張し、家裁がこれを認めて、無効という判決を下した事案で、母親から当職に相談がありました。

同家裁の判決は、二つの疑問が持たれましたので、控訴の依頼を受けて、現在係争中です。

問題の一つは、親権者でない父親に、養子縁組の無効を訴える当事者適格がないのではないかという点、

すなわち、第三者の提起する養子縁組無効の訴えは、養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは、

訴えの利益を欠くという最高裁判所第3小法廷昭和59年(オ)第236号養子縁組無効確認請求事件昭和63年3月1日判決に抵触する可能性があること。

問題の一つは、仮に養子縁組を無効として、祖父母(養祖父母)の親権を失わせれば、子は、児相が不適当と認めている父母のいずれかの監護のもとに強要されるか。

あるいは施設送りになることが想定されるが、それは決して子の福祉に添わないという実態です。

最高裁の、子の監護者は父母に限るという解釈を前提としても、養父母も父母に該当し、法規上養父母が除外されていなので、法解釈上も実体上も法の正義が全うされるものと考えています。

最高裁の判断がでましたら、この場で紹介していきたいと考えています。

投稿者: 武末法律事務所

2021.04.01更新

令和3年3月29日、最高裁判所第1小法廷は、祖父母に依る孫の監護者指定申立は出来ないとの判断を示しました。

その根拠は、偏に根拠法令の厳格な解釈によるものです。調停において、父母に依るによる協議によって祖父母に監護を委ねることは可能ですが、祖父母自体が、裁判所の審判を求めることが可能かどうか判例が別れていましたが、

最高裁判所はこれが出来ないという判断を下しました。

事件の事実関係においては、離婚後親権を有した母親が多忙で、祖母に監護を委ねていたが、再婚して子の養育を望んだところ、祖母はこれを受け入れず、なによりも子供も祖母との生活を望んだという事案で、家裁も高裁も祖母を監護者に指定していました。

子の監護に関する、最高裁の基本理念は、子の福祉であるが、あくまで、子の親権者である父母を前提とするという、根拠法条を厳格に適用したものとされています。今後、立法のレべルで、再検討されるべきものと考えられています。

(日本経済新聞参照)。

 

 

 

投稿者: 武末法律事務所

2021.03.29更新

離婚した相手が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組をした場合、元の夫は、定められた養育費の支払い義務を免れるか、という問題がありました。

従来の高裁決定では、実親の扶養義務は消滅しない等とされたり(福岡高裁平成29年(ラ)第136号養育費減額審判に対する抗告事件決定)、消滅するという判断がされたり、各裁判所で判断が別れていました。

平成30年、最高裁判所は、養子縁組という事情変更により、定められた養育費の支払い義務は免除されるとの判断を示しました(最高裁第1小法廷平成30年(許)第4号養育費減額請求認容審判に対する即時抗告棄却決定に対する許可抗告事件)。

その後、東京家裁平成元年(家)第3672号等子の監護に関する処分(養育費減額)平成2年3月6日審判では、養育費のみならず学費等特別費用も免除される旨の判断がなされました。

なお、養子縁組のない、再婚のみでは、再婚相手の収入が、相手の収入増として、金額の見直しが為されるにとどまるものと思慮されます。

 

投稿者: 武末法律事務所

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