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2022.01.29更新
子の引渡し請求と人身保護法
人身保護請求による子の引渡し請求は、人身保護法を根拠法とする民事訴訟手続で、従来は良く使われていた手法ですが、最近では、家事事件手続法による子の引渡し調停または審判が活用され、人身保護請求は減っているようです。
それは、子の監護に関する判断は、元来、家庭裁判所でなすべき性質のものとして、法整備がなされてきたことによります。
ただ、家事事件においては、以前にも説明しましたが、仮処分は容易には認められませんので、不当な子の拘束という緊急性の高い状況に対し、子の保護を目的とする必要が高いと認められる場合に限り、活用する余地があります。
先例を検討すると、夫婦間と元夫婦間での取り扱いが大きく異なります。夫婦間の場合、双方親権を有していると言う前提で、よほど子の福祉に反すると言う証明をしない限り、子の幸福に反することが明白ではないと言う基準で、引渡し請求は認められません。
単なる環境の比較程度では認められず、仮処分が出ているのに従わない場合、著しく健康が損なわれる場合、義務教育を受けられない場合等の例外事情を証明する必要があります(以上最高裁第3小法廷平成5年(オ)第2108号人身保護法請求事件平成6年2月8日判決・最高裁第3小法廷平成6年(オ)第65号人身保護法請求事件平成6年4月26日判決等)。
これに反し、元夫婦間では、監護権者が定まっていますので、いずれからの引渡し請求も、非監護権者において、相手方の監護が子の福祉の観点から著しく不当という証明をしない限り、認められません(以上最高裁第1小法廷昭和56年(オ)第903号人身保護法請求事件昭和56年11月19日判決・最高裁第3小法廷平成10年(オ)第1850号人身保護法請求事件平成11年5月25日判決等)。
従って、子の引渡し請求は、緊急性が高い事情がありかつその証明が可能な場合には人身保護法に基づく手続きが向いており、そうでない場合には家事事件手続法による手続きが向いていると言うことが言えます。
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2022.01.21更新
財産分与の審判において、不動産の分与を受けない当事者に対して、明渡を命じることの可否。
最高裁判所第1小法廷令和元年(許)第16号財産分与審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件令和2年8月6日決定において、明渡を命じることが出来るとの判断が示されました。
原原審の家裁と同じ結論ですが、原審の東京高等裁判所が、建物の明渡は、財産分与では出来ず、別途訴訟で為すべきであるとしたことに対し、法令違背の違法があるとしました。
根拠法条は、家事事件手続法154条2項4号ですが、原審においては、同法条の適用等の判断自体が示されていません。当職の経験では、たまに、高等裁判所は、家事事件の法令や先例を理解していないと思慮される場面に出くわします。
本件は、財産分与審判に関するものですが、離婚訴訟付帯処分においても人訴法32条2項に同様の規定がありますから、同じ解釈でよいと解されます。
平成23年に、民法を含む人事関係法規の改正が行われました。家事事件は、弁論主義の支配下になく、職権主義の支配下とはいえ、弁護士にも法令の解釈を促す責任があるというところです。
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