離婚BLOG

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2019.03.22更新

離婚に伴う財産分与の本質
財産分与の対象は、本来的には①夫婦で築き上げた財産の清算(民法第768条)としての要素が大きなものです。その場合、一切の事情を考慮してとありますから(民法第768条)②過去の婚姻費用の清算③経済的的弱者への扶助④慰謝料の清算等をも総合的に考慮されることになります。
離婚原因とは関係なく計算されるものですが、上掲の③や④の補充として使われることがあります。共働きでも専業主婦でも夫と妻は対等の割合とするのが、近時の傾向です。財産分与の具体的な方法は、裁判所に大きな裁量権が認められており、現物分割、代償分割、換価分割など、合理的と認められる方法が取られます。不動産について所有権を夫が取得し、妻が使用権を取得する等の例も見受けられます。
離婚後2年以内という除斥期間が定められています。

財産分与の対象の範囲
夫婦で築き上げた財産ですから、原則的に、婚姻後、離婚(別居)までに得た財産となります。従って、婚姻前に取得した財産や別居後に取得した財産そして婚姻中でも相続により取得した財産等は対象となりません。婚姻期間中でも、事実上破綻しその結果別居に至った場合等は、夫婦で築き上げる関係が無くなるので、原則として別居時点に存在した財産というのが多くの判例の説示です。特に、消費し易い金員関係において強調されています。従って、別居後に、片方で消費された財産や、片方で得られた財産は原則として、財産分与の対象とはなり得ません。
例外としては、全体観察をして、特に寄与関係が見受けられる場合等が考えられます(後掲の先例)。別居は、破綻の結果と客観的に評価され易いものです。但し、不動産や株式等個人の意思にかかわらず時価が変動するような財産は、離婚時の時価を基準とされています。

古い最高裁判所の判例に、財産分与の対象となる財産は、口頭弁論終結時を基準にするとされているものがありますが、前提として、夫婦の協力によって得た額その他一切の事情を考慮すべしとされ、その一切の事情の中には訴訟終結時の財産状態も含むとされています。
同事案においては、女性が苦労して家事や夫の商売の基礎的時代を支えた経緯を経て、その後夫が妻に暴言をはいたり卑下したりするようになり、妻が居たたまれなくなって別居し、その後数年後に夫の商売が軌道に乗り多くの資産を生み出した状態で離婚訴訟に至ったというもので、別居に至った事情や、同商売の拡張には、妻の功績を見逃せないという事情を理由としたもので、特殊な事例判決と認められます。従って、一般的な解釈の先例には用いられません。なお、前掲の通り、別居は破綻の原因ではなく、破綻の結果というのが、通常の理解です。離婚原因の稿で取り上げます。

債務等負の財産は、他に分与対象財産がある場合には、優先的に考慮(充当)されますが、負の財産のみの場合には、分与の対象とはなりません。また、家計に貢献しない固有の負債と認められる場合には、他の対象財産の分与の計算にも加えることは出来ません。
不動産のローンについては、不動産を取得する側の負担とされます。長期的に見ると同不動産を取得するに寄与するものが同不動産を取得するという理解でよいと思います。また、不動産をいずれも取得せず売却する場合には、ローン債務超過であった場合には、他に資産があれば、まずこの超過債務に充当という意味で、負債の分担ということが行なわれますが、他に全く資産が無い場合には、残債務を分担させるということは行なわれません。債務名義者(多くは夫)の負担として残され、相手方(多くは妻)に負担させることは為されていません。
しかし、ギャンブル等で通常の娯楽の域を脱した範囲の借金等の、夫婦共同生活の為の借金とは認められないものは共有負債にはなり得ません。保証関係にあるものは、別制度の取扱いです。

会社や法人の財産
会社や法人の財産は、例え経営者であっても、夫婦共有財産とはなり得ません。しかし、その株式や持分等は、夫婦共有財産となり得ます。婚姻期間中の始業か否か、経営における寄与度などの評価が争点になります。上掲の古い最高裁判所の先例も、広い意味で、その一つのケース(事例)と認められます。

退職金
給与の後払いと解釈されていますから、婚姻期間に対応する部分は、当然に共有財産と理解されます。但し、従来の判例における具体的な取扱いはまちまちで、概して見ると、退職間近な場合には、退職時に支払うこととされ、退職まで時があるときには、交通事故の逸失利益の計算と同様の金利差し引き計算をして離婚時に支払うこととされる例が見受けられましたが、最近は、離婚時点で任意退職したらいくらか(という証明をとって)、その金額を離婚時に支払うこととする例が多いようです。税金額を差し引くのが合理的公平です。

年金分割

別制度の取扱いです。就業期間と婚姻期間の按分額の2分の1というのが一般です。

不合理に高額の財産分与

不合理に高額の財産分与がなされた場合には、分与側の債権者に対する詐害行為として、一部取り消しとされる場合があります。かって、破産者が破産申立以前に離婚の形をとって、妻に財産分与名目で財産を渡し、これが否認の対象とされた事案が見受けられました。

以上オフィシャルホームページから引用

投稿者: 武末法律事務所

2019.03.05更新

相場。 過去に取り扱った事例をもとに、説明します。

特に定まった基準などは有りません。過去の判決例を見ると、一般的には金300万円を上限として、情状により低減されているように見えます。

バブルの頃は、世間相場に対応して上限金500万円が相当とか言われたこともありますが、現在はまた元に戻ったように見えます。

しかし、事情によっては、慰謝料という性質上、より高額が認められることもあります。離婚原因だけでなく、双方の経済力が影響することが多いようです。
特に、片方のみに離婚原因の責任がなく、かつ見るべき共有資産もない場合には、収入源のある方(主に夫)から収入源のない方(主に妻)に一定額(金300万円程度)の給付をさせる場合があります(扶養的財産分与)。一般的に、夫は従来の仕事の継続により将来の収入が見込めますが、特に専業主婦であった女性、特に高齢であった場合等は将来の収入の見込みが立たないからです。

離婚の慰謝料は、不貞の慰謝料等とは別ですので、不貞の慰謝料を得ても、その後、離婚に至れば別に請求することが出来ます。但し不貞の相手方に対しては3年を経過すれば、原則できないという最高裁判決が、最近出ました。

有責配偶者の場合。
非有責配偶者が、有責配偶者を相手に、離婚を求める場合には、上記の基準と変わりは有りません。 

しかし、有責配偶者が、離婚を求める場合に、相手方が拒絶した場合には、無条件には離婚が認められません。例外的に、相応の給付を提供することで認められた例も有りますが、これは、有責性の度合いが薄く、子供たちも独立していてその養護に不安がなく、かつ相手方が不安なく十分に将来生活出来る程度の給付が提供された場合です。

最高裁判所が、有責配偶者でも、一定の要件を満たせば、離婚を認めるという判断を下して以来、有責配偶者からの離婚請求はそれまでのように絶対不可能とは言えなくなりました。儒教思想から解放されて人間性を重視する破綻主義を重んじるようになったからだと思慮されます。
しかし、一定の要件、すなわちより人間的な実質的な思想に従う要件として、子供の福祉、相手の将来の生活、一定の期間などが掲げられています。なかには一定の期間が過ぎれば離婚可能などと誤解している専門家もいますが、その場合にも相当の給付の提供が条件とされます。
また一定期間もその具体的な状況により長短があり、5年でも可という場合もあれば20年でも不可という場合も認められます。福岡高裁の場合、基準的な別居期間7年、子供が高校卒業するまで、相応の生活保障等の基準があるということです。

実績。 取扱った高額な事案(いずれも比較的古い事案ですが、当職は、特に離婚事件については全国から依頼を受けますので事案特定の対象地は特定の地方を指すものではありません)。
夫と妻共々地方都市の複数の病院を配下に置く医療法人の株主たる医師で、夫が看護婦さんとの間で子供を作り同居した事案で、離婚及び財産給付を協議により解決した事件で、慰謝料8000万円と財産分与等1億4千万円の現金合計金2億2千万円で協議和解した事案があります。
夫が地方都市の病院の2代目医師で、看護婦さんを自宅に入れて子供も作った有責配偶者である夫から離婚を求めた事案で、子ども二人を育て上げた専業主婦である妻からの依頼の事件で、居住していたマンションと現金給付合わせて約1億円で調停和解した事案があります。
夫が地方都市の企業の経営者で、それまで一人娘を大事にしていたが、外(ホステスさん)との間で男の子を不妊治療法で得た有責配偶者である夫から離婚を求めた事案で、自分も仕事を持っていた妻からの依頼の事件で、居住していた自宅と現金給付合わせて約1億円で調停和解した事案があります。
夫が地方都市の一般的サラリーマンで、独身の女性と同居した事案で、3人の子供を養育中の遠方の地方都市に居住し、離婚を拒絶しながら婚費を求めている妻を相手に、有責配偶者である夫からの依頼の事件で、相当期間(定年まで)の分割による約金3000万円で調停和解した事案があります。
夫婦共地方都市の教員で、夫が他の女性教員と同居した事案で、子育てを終わったが離婚を拒絶している教員の女性相手に、有責配偶者である夫からの依頼の事件で、退職金全額相当の約金3000万円で(他の女性の退職金は無傷)調停和解した事例があります。
夫が地方都市の自営業創設者で、長期別居の間に会社の女性と交際をなしたうえ離婚を求められた、3人の子供を養育中の妻からの依頼で、現金4000万円と10年間自宅無償使用、子供一人の大学卒業までの養育費各子月17万円等の条件で、協議離婚した事案があります。
夫が勤務医師(親は開業医)で、単身赴任先の薬剤師と同居して、離婚を求めた事案で、妻からの依頼により、分割払いによる金3000万円で調停和解した事案があります(子供なし)。

当職の基本方針。
まず、いずれの立場にたっても、相手方の立場、心情を理解して、交渉に入ります。特に、女心が分からない、真面目すぎる、片方の利益しか考えられない専門家は事をこじらすことが多くなります。
次に、人生観として、前向きに処理することを第一に考えます。そのうえで経済的補償を考慮します。端的に言えば、相手が有責者である場合に、手に職があり将来に選択肢が多い依頼者の場合には、経済的給付の条件にとらわれずに早急な離婚を勧めます。しかし、手に職がなく、子供の教育や将来の生活に不安を感じたり、特に将来を急がない場合などは、相手の経済力に沿った最大限ないし納得出来る相応の財産給付を得るように勧めます。
この段階で、相手方と条件交渉に入りますが、その前に離婚を諦めて婚姻費用を支払い続ける相手方や依頼者もいます。また、当方が有責配偶者である場合には、可能な限り最大限の財産給付を検討して相手に提案することを勧めます。
いずれの立場であっても、当職が相手の立場に立って提案し、相手が冷静に考えれば、相手もいわば最悪な現状から抜け出して、相応の資金を元に再出発することが人生として有意義であるという共通の認識を持つことが出来るからです。


番外編・愛人のケース
30年ほど前のバブルの頃、ある遊戯場会社の社長の愛人を7カ月して、相手と別れたいから、慰謝料を取りたいとの依頼を受けました。彼女は自称元モデル、スチュワーデスで、美貌を保つために相当投資をしているとのことで、彼氏からの一か月の手当は金50万円、別れる原因は、当初子供も欲しい養育も負担すると約束していたのに、妊娠したとたんに降ろせと言われたこと、ということでした。
通常、愛人関係の清算に金員の要求は出来ません(支払った金員の返還請求も出来ません)。しかし、諸事情が存在し、最終的に、金6,000万円の慰謝料で和解が成立しました。

以上オフィシャルHPから引用

投稿者: 武末法律事務所

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