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2024.02.04更新

通常実務の取り扱いは、婚姻費用分担申立調停提起月からとされています。

本来、婚姻費用分担の法的根拠は、民法752条の夫婦扶助義務に基づくものであるから、婚姻費用が支払われなくなった時(多くは別居時)から発生するというのが理屈です。しかし、別居後相当期間を経て請求が為された場合、これを別居時に遡って払えというのは義務者に酷になる等の理由で、実務では、衡平(信義則)の観点から、調停申立時とされています。

また、婚姻費用分担義務は、同居等の事実上の関係から生じるものではなく、婚姻と言う法律関係から生じるものであるから、婚姻後同居や協力関係等の事実が全くなくとも、調停申立時から義務が発生するとされています(東京高等裁判所令和4年(ラ)第1604号婚姻費用申立却下審判に対する抗告事件令和4年10月13日決定)。

しかし、その支払い開始時期の定めは、信義則に基づく制限ですから、事案の内容によっては、内容証明郵便で請求した時(東京家庭裁判所平成27年(家)第2612号婚姻費用分担申立事件平成27年8月13日審判)とされたり、代理人弁護士が通知を出した事実が認められたりした時から発生するとされる実務が増えています(通知のやりとりに争いが無い場合やFAX履歴が残されている場合等)。

また、原則に戻って、信義則の適用により(別居の原因が主に義務者にあり、権利者が子の医学部進学の費用や生活費に困窮していた事情を、権利者が十分に認識し得た事情の存在等を認定して、別居時に遡って支払い義務が発生するとされた事例(広島高等裁判所平成49年(ラ)第5号婚姻費用分担の審判に対する即時抗告事件昭和50年7月17日決定)があり、最近では、義務者は権利者が要扶養状態にあったことを当然に認識すべきであったことや別居から調停申し立てまでの期間が短い(一月)ことを理由に、別居時に遡って支払い義務が発生するとされた事例が存在します(最高裁判所第2小法廷平成24年12月5日決定=仙台の定禅寺通り法律事務所に依るネット情報により事件番号未確認)。

 

 

 

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2024.02.02更新

婚姻費用の算定の基礎の一つである義務者の収入の認定において、通常は給与所得者であれば最新の源泉徴収票等の収入証明額で、自営業者であれば確定申告書の課税される所得金額に実際には払われていない青色申告控除額等を加算して、定められます。

ここで、特殊な事例を紹介します。

義務者に親から相続した等の固有財産からの賃料や配当が存在すれば、これが収入(所得)に加算されています(大阪高等裁判所平成30年(ラ)第389号婚姻費用分担審判に対する抗告事件平成30年7月12日決定)。

義務者の農業収入において、天候等により年度ごとに収入が一定しないものは過去5年程度の平均収入を基礎にすべきとされています(東京高等裁判所平成8年(ラ)第1447号婚姻費用分担申立却下審判に対する即時抗告事件平成9年7月30日決定)。この先例の応用としては、取締役報酬等が業績によって変動する事実が認められれば、過去5年間の平均で認定ということも考えられます。

義務者が、収入証明を提出せず、収入認定が明確に出来ない場合において、義務者が相応の生活をしている事実を踏まえ、義務者が事前了承していた医科大学に在学中の子の学費や生活費全額を婚姻費用相当額とされた例があります(大阪家庭裁判所昭和41年(家)第4585号婚姻費用分担請求事件昭和41年12月13日審判)。

また、義務者に借金があることは婚姻費用分担額を左右しない(収入から差し引かれない)とされています(東京家庭裁判所平成27年(家)第3845号婚姻費用分担請求事件平成27年6月26日審判)。これは特殊な事例というよりも、時々存在する案件です。

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2023.12.15更新

現在、家庭裁判所では、財産分与において、退職金は、基準日(通常別居時)において、任意に退職した場合の退職金の額(会社から証明書の発行を受けたり、就業規則等で証明)を、勤務期間と同居期間で按分し、同居期間部分に相応する金額を、夫婦共有財産部分として財産分与の対象とするのが通例となっています。退職金は給与の後払いという性格に基づくものです。

その基準日を別居日とすることについて、必ずしも実質的な破綻の時期とは同じではないと認められる微妙な事案について、判示した判例があります。東京家庭裁判所平成21年(家)第8229号同8230号財産分与申立事件、請求すべき按分割合に関する処分申立事件平成22年6月23日判決の事案において、夫は、同居中に妻が夫相手に離婚調停や離婚訴訟を提起した時には、夫婦関係が破綻して相互扶助関係が途絶えていたので、同時期が基準日であると主張したのに対し、同裁判所は、あくまで夫が家を出た別居時が基準日であるとしました。この考え方は、所謂離婚原因足る婚姻関係の破綻の原因認定時期と、財産分与の基準日が必ずしも一致しないことを示しています。理由は、不仲になった時期もあったものの、それぞれの役目を果たし、夫婦共同財産の維持をしてきたものということが出来るというものです。

破綻の認定は、あくまで、意思の喪失を含めて客観的な証拠や経験則によりかつ信義則的要因を含めて判断されるますので、単に家庭内別居を主張しても、それ自体で破綻原因としての別居とは認められませんが、調停や訴訟を提起したという客観的事実があれば、同時点で婚姻関係は破綻していると認めることも不合理ではないので、同裁判所の判断は、破綻の認定時期(人的物的相互扶助関係喪失時)と、財産分与の基準日(物的扶助関係喪失時)は、必ずしも同一ではないと考えたという側面を有しています。

上級審の判断も見たかったのですが、上級審の判例が見当たらないので、確定したのかなと思慮されます。

投稿者: 武末法律特許事務所

2018.05.18更新

収入に応じた按分割合か折半か。

標準的算定方式では、公立学校の学校教育費を前提とし、これと私立学校の学校教育費との差額分について負担が問題とされてきました。

別居前に、私立学校へ入学することに同意ないしそれを前提とした教育を為していれば、その差額分を負担する義務が生じます。

また、中高一貫私立中学校に、入学すれば、特別のことがない限り、私立高校に入学しますから、その教育費の負担も免れないことになります。

その私立学校教育費と公立学校の差額についての負担割合は、福岡家庭裁判所においては、双方の収入に応じた按分割合によるとされており、他の家庭裁判所においてもそうです。

しかし、大阪高等裁判所平成26年(ラ)第595号同26年8月27日決定で、負担割合は折半とする判断が為されました。

一見不合理に様にも見えますが、算定方式による婚費の分担により双方の生活原資が同額となり生活水準が同じになるという前提ですので、超過学費は折半すべしということで、理にかなっています。

但し、これは、夫婦とも高収入の事案であり、節約の利く範囲が大きい場合には妥当するが、片方が低収入で節約が利く範囲が少ない場合には、収入按分比による方が合理的であるとの意見もあります。

従来、調停和解などにおいては、私立学校費用は折半とする例も少なくありませんでしたが、審判となると按分割合とされてきました。事案の内容ごとに、今後の流れを見守りたいところです。

 

 

 

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2018.05.09更新

平成30年4月25日、名古屋地裁で、妻の虚偽申告を、警察が鵜呑みにした結果として、夫が不当にDV認定を受け、子供に面会できなくなったとして、妻と県に賠償を命じる判決が出されました(共同通信・中日新聞・毎日新聞等引用)。

裁判長は、「DV被害者の支援制度が悪用される事例が社会問題化している」「面会の妨害目的だった恐れがあったのに、警察は事実確認を全くしなかった」と指摘しました。

最近、実務を行っていて、相手に(破綻責任や面会拒絶原因としての)DVがあったと主張し、それを証明する手段として、警察に相談する記録を残したり、保護命令を受けたりする事例が増える傾向が認められ、中には、比較的、実体がない形式的なもの、あるいは証明のための手段に過ぎない、と思慮されるケースも少なくないと感じるようになっていた矢先の判決です(ネットによる知識かあるいは一部の専門家のアドバイスによるものか)。

直近、相談を受けた例で、突然、警察官が自宅に来たという事案を聞くと、警察官は相手方の言い分が正しいという先入観をもって、調査をした形を作るための一方的な行動で、法的にあり得ない判断(理由づけ)を押し付けたと評価されても仕方のない内容も認められました。従来から、裁判官が、法律と先例に基づいて為すべき判断を、十分な法的知識を有していない一部の警察官が、特定の利害関係者であるかのように、事実と法的評価を押し付けて、弱い立場にある個人を追及する事例が認められたことがあります(殆どの場合はそうではありませんが)。

また、DVの証明手段として、精神科医の診断書も多く出される傾向にありますが、精神科医の診断書は、当事者の求めた内容に応じて安易に出されるものという印象が強く、裁判所においても、必ずしも重きを置かれていない印象を受けています(鬱病との診断書が出されていましたが、どう見ても適応障害と認められた事案も存在しました)。

DVの証明は、傷害を受けた診断書、傷害を受けた部位の写真、録音、録画、メール履歴、客観的第三者の証言等の、客観性が担保される証拠(陳述書や、身内の証言等は主観的証拠として、殆ど証拠価値は認められません)によって、地道に為して行くのが正道であり、裁判官に対する説得力があるものです(最後は本人尋問により裁判官が心証を形成します)。

但し、診断書や写真があっても、病院のカルテや、直後の円満に行動している家族写真等によって、DVとは無関係のものであることを証明した例もありますので、虚偽の事実を作ることは正道とは考えられません。正道の積み重ねが、裁判官や世間に対する信用を作り上げるものと考えています。 

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2018.05.09更新

平成30年4月25日、名古屋地裁で、妻の虚偽申告を、警察が鵜呑みにした結果として、夫が不当にDV認定を受け、子供に面会できなくなったとして、妻と県に賠償を命じる判決が出されました(共同通信・中日新聞・毎日新聞等引用)。

裁判長は、「DV被害者の支援制度が悪用される事例が社会問題化している」「面会の妨害目的だった恐れがあったのに、警察は事実確認を全くしなかった」と指摘しました。

最近、実務を行っていて、相手に(破綻責任や面会拒絶原因としての)DVがあったと主張し、それを証明する手段として、警察に相談する記録を残したり、保護命令を受けたりする事例が増える傾向が認められ、中には、比較的、実体がない形式的なもの、あるいは証明のための手段に過ぎない、と思慮されるケースも少なくないと感じるようになっていた矢先の判決です(ネットによる知識かあるいは一部の専門家のアドバイスによるものか)。

直近、相談を受けた例で、突然、警察官が自宅に来たという事案を聞くと、警察官は相手方の言い分が正しいという先入観をもって、調査をした形を作るための一方的な行動で、法的にあり得ない判断(理由づけ)を押し付けたと評価されても仕方のない内容も認められました。従来から、裁判官が、法律と先例に基づいて為すべき判断を、十分な法的知識を有していない一部の警察官が、特定の利害関係者であるかのように、事実と法的評価を押し付けて、弱い立場にある個人を追及する事例が認められたことがあります(殆どの場合はそうではありませんが)。

また、DVの証明手段として、精神科医の診断書も多く出される傾向にありますが、精神科医の診断書は、当事者の求めた内容に応じて安易に出されるものという印象が強く、裁判所においても、必ずしも重きを置かれていない印象を受けています(鬱病との診断書が出されていましたが、どう見ても適応障害と認められた事案も存在しました)。

DVの証明は、傷害を受けた診断書、傷害を受けた部位の写真、録音、録画、メール履歴、客観的第三者の証言等の、客観性が担保される証拠(陳述書や、身内の証言等は主観的証拠として、殆ど証拠価値は認められません)によって、地道に為して行くのが正道であり、裁判官に対する説得力があるものです(最後は本人尋問により裁判官が心証を形成します)。

但し、診断書や写真があっても、病院のカルテや、直後の円満に行動している家族写真等によって、DVとは無関係のものであることを証明した例もありますので、虚偽の事実を作ることは正道とは考えられません。正道の積み重ねが、裁判官や世間に対する信用を作り上げるものと考えています。 

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2018.04.18更新

夫婦関係が破綻し、母親が子供を連れて実家に帰るという事例は少なくありません。

それが、遠方である場合、父親が子供と面会する為には、多額の費用がかかることになります。

最高裁判所は、面会交流に係る費用は面会交流の実現のためにそれぞれの親が支出したものについて、支出したものが負担すべき筋合いのものとの決定を出しました(最高裁判所第二小法廷平成24年12月19日(W-jurist引用))。

同居生活から、遠方に引っ越したのは妻ですが、最高裁判所は、子供の年齢、世話をしてきた実績等から、一方的な連れ去りと評価することは出来ないと説示しました。

 

投稿者: 武末法律特許事務所

2017.10.13更新

婚姻費用分担請求事件において、請求者に破綻原因としての不貞行為が認定される場合、相手方は、子供の養育費相当分に限って負担義務が認められ、請求者分の費用は負担する必要がない、というのが一般的な先例です(大阪高裁平成28.3.17決定は、原審の不貞行為とは認められないとの判断による審判を変更して、同旨の決定を下しています)。

なお、その根拠は信義則ないし権利濫用ですから、具体的な事情によって、請求者分の費用分担を認めている先例もあります(札幌高裁昭和50.6.30)。

これに対し、一度、婚姻費用の分担額が調停において定められた後で、相手方が、不貞の相手方との間に子が出来たとして、事情変更による婚姻費用の分担額の変更(減額)を申立てた事件で、原審(名古屋家裁)は、これを認めると不貞行為の助長・追認となるとの理由で申立を却下しましたが、抗告審(名古屋高裁)は、不貞の相手方との間の子の扶養を重視して、原則通り、婚費分担額の減額を認めました。夫婦間の倫理に基づく権利濫用は不貞の子であってもその福祉は保護されるべきという意味で高裁判断は妥当であると思慮されます。

投稿者: 武末法律特許事務所

2017.04.04更新

離婚前に、父親が、子共を連れて、別居に至った場合に、母親が、仮の、子の監護者の指定と引き渡しを求めた事案で、審判前の保全処分を認めた東京家裁の平成28年4月7日審判を覆して、仮処分審判は原則として認められないという決定を、東京高裁が平成28年6月10日に出しました。

この傾向は、従来の先例において、認められてきたことですが、家裁が、容易に仮処分を認めたので、高裁において再確認されたものです。

母親から見れば、子の連れ去りが為されて1年位経ってからだと、現状優先の原則が働き、回復は困難となりますが、比較的速やかに(1~2カ月以内程度)、家庭裁判所に、子の監護者の指定と子の引渡の調停(審判)を求めれば、母親優先の原則の事情が存在する限り、現状優先の原則は働かないいので、通常の場合、慌てることはありません。

このような事案で、通常の場合ではないとして、保全処分が認められるのは、子の連れ去りが強奪やそれに準じたものである場合や虐待の可能性が見込まれる場合や急激な環境の変化により子の健康状態の悪化が見込まれる場合等に限られます(その場合には母親の連れ去りに対しても同じことです)。なぜならば、通常の場合、子の監護者を定める場合には、慎重な調査や審理を経て行われるべき微妙なものであることで、仮の審理には適さないものであることや、仮処分には強制執行力が与えられますので、その後の慎重な判断を待って為すべきことが、安易に実行されると、子に与える打撃が大きいためということです。

通常の親子関係のもとでの(虐待歴がある等の場合ではなく)、父親に依る子の連れ去りに対しては、母親は、速やかに子の監護者の指定と引き渡しを求める調停を起こせば、調査官調査が為され、その結果に従った調停ないし審判が為されますので、心配することはありません。

投稿者: 武末法律特許事務所

2017.02.08更新

平成29年1月26日に東京高等裁判所で、母親が長女と年100回子供と面会できるようにすると提案した父親の訴えを避け、母親を親権者とする、原審を覆す判決が出されました。

この判決自体には、何ら問題がないのですが、原審である千葉家裁松戸支部が、父親の提案を重視して、父親を親権者とし、長女を母親に引き渡すことを求めたことが、異例であったことです。

事案の詳細は、まだ見れていませんが、高裁の判断は、妥当であるり、ホッとするとともに、原審の判断は理解しがたいとしか言いようがありません。

離婚において、一番の被害者は子共であり、その福祉を第一に考えるべき、というのが従来からの最高裁判所の指導であり、法の理にかなっています。

そこにおいては、母親基本、同居基本、環境基本、子の意思基本等の判断基準が示されてきましたが、大事なことは各個の形式ではなく、全体的実質的な子の福祉です。

母親が父親と別居するに際して子を伴うことは、普通の事であり、普段から世話を受けていた子にとって福祉にかなうことであり、原則として(虐待親等は別論)連れ去りという表現は妥当しません。

母子の関係、同居の継続等の実態的な内容に即した子の福祉を重視すべきであり、これを無視して、年100回の面会交流の提案を重視し、親権を定める等、理解できるものではありません。

高裁は、面会交流の回数について、「月1回程度の提案は不十分なものではない」との判断も示していますが、広く従来から基準とされているものを再確認したものと理解されるものです。

面会交流は、同居しない親の愛情を確認する機会として求められ、月1回であれば、これが満たされるという価値基準があり、特に子供は成長するにつけ、自分の部活や習い事特に友達との交際を大事にするに至るものであるから、

年100回の面会交流などは、子に時間的、体力的な負担を負わすことになり、決して子の福祉にはならない(親の立場である)という実態を理解出来ていれば、松戸支部のような異例と呼ばれる判決は無かったのではと思慮しています。

投稿者: 武末法律特許事務所

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