離婚BLOG

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2018.12.26更新

監護者の指定や面会交流等の子に関する調停における、両親の争いにおいて、裁判所は、調査官調査を行い、判断の資料に使うことが通常です。

最近の調査官は、教育も受けていて優秀なので、概ね、その調査結果に信頼が持てるといえ、その結果、審判や決定は、調査官調査の結果を重視した内容で為されることが多いものです。

ただ、たまに、客観性を欠いたり、片方の主張に影響を受けたかのような、また先例の勉強不足や社会経験則に欠けると思慮される案件に出会うことも否定できません。

当職も、過去に、数件、おかしいなと思われる調査報告書に出会ったことがあり、これを鵜呑みにした審判に対しては、即時抗告で、是正してもらったことも少なくありません。

東京高等裁判所平成27年(ラ)第608号面会交流審判に対する抗告事件同年6月12日決定は、調査官の調査報告書における、面会交流を控えなければならないような未成年者側の事情がない,との意見を抑えて、

将来の良好な父子関係を構築するためには、相手方の負担を増大させてまで直接交流を行うことは、かえって未成年者らの抗告人(父親)に対するイメージを悪化させる可能性がある、として、

複数の精神科医師の診断結果を、証拠として重視して、調査官調査報告書と異なった判断を示し、直接の面会交流を認めない決定を行いました。

父親のDV等により、母子が心的外傷後ストレス障害との複数の意思による診断を受けており、面会交流により心因反応が見込まれる場合には、未成年者の福祉に添わないものとして、

間接面会(父親からの手紙と母親からの写真)の限度で認めた、妥当な決定だと思慮されます。なお、原審の、東京家庭裁判所の審判も同様の判断を示していました。

 

投稿者: 武末法律事務所

2018.12.08更新

一般的に、別居の事実は、破綻を推定させる一つの要素であり、必ずしも破綻の結果であるとも、破綻の原因であるとも認められません。本来、破綻の事実の認定は、夫婦間の諸事情により認定されるもので、別居自体により認定されることはあり得ません。

しかし、諸事情により破綻の事実が証明されない場合、別居の期間が破綻を証明する結果になることがあります。

本来、夫婦は両性の合意において成立するものですから(憲法の定め)、片方が嫌だと言えば、夫婦関係は成り立たないことになります。しかし、婚姻も契約の一種ですから、片方が勝手に嫌だというのを全て認めることは、安易な契約違反を認めることになります。

そこで、民法770条は、夫婦関係が破綻していることをもって、法的な離婚を認める条件となしています。ただ、かっては、民法770条の解釈を有責主義によるものと解釈され、相手の有責性を証明しなければ、離婚が認められないあるいは有責者からの離婚は認められないという解釈が採られていましたが、現在は、破綻していれば離婚を認め、例外として離婚を認めることが権利濫用に該当する場合にはこれを認めなかったり、附帯条件を厳しくすることになっています。

そこで、破綻自体の証明が困難である場合に、別居していれば、破綻している蓋然性が強いことに着目されて、別居期間何年以上であれば、破綻が認められると説明する専門家もいますが、別居は、あくまで破綻の一つの判断要素に過ぎないので、同居中でも、他の要素での破綻が証明されれば、離婚が認められますし、破綻の期間が長期に及んでも、権利濫用に該当する場合には、離婚が認められません。従って、原則として、別居期間の長短のみでは、判断基準とはなり得ません。

別居期間が、数カ月でも、片方の離婚の意思が固く、他方が関係修復の努力をすることなく相手を批判ばかりしている場合には、直ちに破綻の事実が認定されても仕方がありません。他方、長期別居でも、それが単身赴任や、定期的に交流があったり、経済的な保障関係が認められば、容易には破綻の事実は認められません。

東京高等裁判所平成27年(ネ)第1064号離婚等請求控訴事件同28年5月25日判決は、破綻原因の主張事実は証明されないし、別居期間3年5カ月は(同居期間10年)短い等として離婚請求を棄却した原審(東京家庭裁判所立川支部)を取り消して、別居期間が4年10カ月にわたった、離婚を認めていますが、同原審の判断には多いな疑問が認められます。破綻とは、夫婦関係の回復可能性が認められないということですから、片方の意思が固かったり、相手方の修復への努力が強く認められなかった等の修復実現可能性が具体的に認められない場合には、修復不可能と言うのが世間の常識だからです。

経験則的に見て、同居中に特に破綻原因が認められなかった夫婦でも、年単位を越せば、修復はあり得ないと考えられます。他方、別居後間もなく他の異性と男女関係にあることが認められた場合、破綻後の行為であるから離婚原因にならないという主張は認められないというか、その関係は、経験則的に見て、別居以前から存在したものと認めるのが、合理的と判断されると思慮します。別居後の男女関係は、破綻の原因ではないという古い先例がありますが、その事案は、養子に入ったが、理不尽に追い出され、10数年後に相手が見つかって一緒になったと言う具体的な事実認定がなされているものであり、現在においては、少なくとも年単位を経ないと、他の異性との男女関係が発覚した場合、破綻の原因ではないという主張が通るのは難しいのではないかと思慮します。

すなわち、多くの判決を見ていると、同居期間中の破綻が証明されなくても、片方の意思が固く、相手方の具体的な修復に向けての行為が認められなく、特別の事情が認められない場合には、別居が1年を超えると、破綻と認定される場合が多いと、判断されます。

投稿者: 武末法律事務所

2018.12.08更新

従来の判例の流れについてオフィシャルHPもご覧ください。

◎慰謝料 http://www.takesue-law.com/rikon2.html

◎財産分与 http://www.takesue-law.com/rikon3.html

◎有責配偶者 http://www.takesue-law.com/rikon4.html

◎親権・監護権・戸籍 http://www.takesue-law.com/rikon5.html

◎養育費・婚姻費用・面会交流 http://www.takesue-law.com/rikon6.html

投稿者: 武末法律事務所

2018.12.04更新

最高裁判所第1小法廷平成24年(許)第48号間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件同25年3月28日決定で、給付の特定に欠けることがない場合に間接強制決定ができる旨示したことは、既にご紹介しました。さらに、同事案は子供が拒絶する意思を示した事案でしたが、判示は、審判がある以上、これの間接強制を妨げる理由にはならないとしました。その理由として、子の面会交流に係る審判は、子の心情等を踏まえたうえでされていることを掲げています。すなわち、調査官調査等によって試行面会や子の身上調査が為されていることの結果である点を重視して、当面の子の意思を真意なものとはとらえられない危惧を解消しています。しかし、子の意思の変化が、審判時とは異なる状況が生じたと言える時は、面会交流を禁止したり新たな条項を定める為の調停や審判申立る理由となりうることに言及して、その解決方法を説示しています。

大阪家庭裁判所平成27年(家ロ)第50122号間接強制申立事件同28年2月1日決定は、未成年者が拒絶した事案で、債務者が未成年者に対して適切な指導助言することに依り、未成年者の福祉を害することなく義務を履行することが可能であるとして、間接強制を認めていますが、これは審判時における試行面会で債権者と子供が楽しそうに問題なく面会を行っていた等の実績を掲げています。

他方、東京家庭裁判所平成23年(ラ)第152号間接強制決定に対する執行抗告事件同23年3月23日決定は、子が債務者の説得にもかかわらず権利者の元に行く事を拒んだ事案で、義務者の義務は、権利者による子の引き渡しを妨害しないという不作為義務であるところ、義務者が子の引き渡しを妨害しているとも、その恐れがあるとも言えず、その立証も為されていないことを理由に、間接強制申立を却下しています。

従って、面会交流や引き渡しの調停や審判手続きにおいて、子が拒絶の意思を有している場合は(通常10歳前後以上はその意思が重視されます)、調査官調査により調査報告により確認された段階で、面会交流や子の引渡を認めない判断が為されて、従って執行の問題も起きないことになりますが、仮に審判が為されたとしても、義務者が、これを妨げる可能性が立証されない限り、間接強制は不可能ということになります。

権利者、義務者や裁判所が、子の意思を無視した義務を義務者に強いることは、仮にその内心が義務者に対する気遣いであったとしても、そ自由意思を抑圧し、子の福祉に添わないことになるからだと思慮されるところです。

 

投稿者: 武末法律事務所

2018.12.01更新

大阪高等裁判所平成27年(ラ)第241号子の監護に関する処分(養育費)審判に対する抗告事件同27年4月22日決定は、私立大学に進学した子供の養育費について、公立大学の学費相当部分について、3分の1を非監護親が負担すべきとの判断を示しました。

これは、諸般の事情を考慮してという事例決定(普遍的な基準とはならないもの)ですが、養育費の審判において、学費の負担について多く争点になるところなので、考慮された諸般の事情は、参考になります。

同事件は、大學に進学している長女については、高校を選ぶ時点で、国立大学を目指しており、両親の共通の認識であったこと、夫婦の収入のみでは学費等全てを補うことは困難である事情があったこと、すなわち子が奨学金を受けあるいはアルバイトをすることが前提認識であったこと等の事情を認定し、22歳まで養育費を支払う義務を認め、負担割合について、両親及び子が各3分の1づつ負担すべきとして、国立大学の学費標準額及び通学費から、標準的算定方式においてあらかじめ考慮されている公立高校を前提とする標準的学習費用を控除した額に、非監護者が負担する割合を乗じて算定した額の限度で(原審の定めた額を減額して)認めたものです(夫婦には次女がいますが、事情を異にするので省きます)。

なお、東京家庭裁判所平成27年(家)第2612号婚姻費用分担申立事件同27年8月13日審判は、大学生の子が、奨学金で学費の9割以上を賄えている場合は、算定表によることが出来ない特別の事情として考慮するのは相当でない、という判断を示しています。

投稿者: 武末法律事務所

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